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~介護士から看護師へ~

受験資格と言葉の壁を
超えた挑戦
当法人で働いている中国人の于宏(ウ・ホン)さんが、2023年度第113回看護師国家試験を受験し、見事合格へと至りました。
海外で看護師資格を取得している方が日本の看護師国家試験を受験できる「受験資格認定制度」を用いてのことでしたが、厚生労働省の認定を受けるまでにはいくつものハードルを乗り超えなければなりませんでした。
また、于宏(ウ・ホン)さんは日本語能力検定1級を持っていますが、看護師試験の勉強は専門的で見慣れない単語も多く、言葉の壁も立ち塞がりました。
そんな数々の苦労を超えて、看護師資格取得という快挙を成し遂げた于宏(ウ・ホン)さんに合格までの道のりについてインタビューしてみました。


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― 于宏(ウ・ホン)さんはどういう経緯で看護師国家試験を受験しましたか?
 
3年ほど前に理事長(※冒頭写真右)から、中国の看護師資格と日本語能力検定1級を持っていたら、日本の看護師国家試験を受けることが出来る制度があります。という情報を貰ったのがきっかけです。
 
― その制度はどんなものですか? 
 
理事長の情報通り、中国の看護師資格と日本語能力検定1級を持っていたら申請できます。ただし、それ以外に提出しなければいけない書類がたくさんあります。
特に私は看護学校を卒業してから36年経っています。提出が求められている書類には、私が卒業した当時にはなかったものもあります。例えば教科ごとのシラバスです。また、小学校から高校までの必要就学年限は12年と定められていますが、私の時代の中国は小学校が5年制でした。卒業した当時の看護師に関する法令も必要ですが、そもそも卒業時には中国にそのようなものはなく、私が卒業した6年後の1993年に初めて看護師に関する条例が国から発布されています。私は看護師国家試験が免除される学校を卒業したので国家試験合格証もありません。必要な書類が満足な形で揃いません。そのような事情を一つひとつ丁寧に説明できる資料をそろえました。
― ご苦労されましたね 他にも大変なことがありましたか?
 
最初に準備を開始したときは中国がコロナゼロ政策を採っていたため国に戻ることが出来ず、ほとんどの書類を集めることが出来ませんでした。準備できないので受験は見送りです。
再度気を取り直し、去年の4月にコロナゼロ政策が終わった中国に戻って私が卒業した学校を現在引き継いでいると思われる学校を探し当てて、やっと学校関係の必要書類を入手することが出来ました。

― それで申請が出来ることになったのですね?
 
いいえ、そろえた書類とすべての書類の日本語訳を付けて、いったん厚労省の担当官にWEBでチェックしてもらいます。それで問題がなければそれらの書類に公証を貰います。公証は国によっては日本にある領事館でもらうことが出来ますが、中国の場合は本国の公証役場へ行かなければ出来ません。また、中国の役所は気温が35℃以上になると休みになります。公証のためにどのくらい時間がかかるか分からないため、航空券は片道ずつ購入しました。

― 公証はすぐにできましたか?
 
いいえ、これも苦労がありました。学校関係の書類は比較的簡単に公証してもらえました。しかし、法令関係については簡単ではありません。国の法令を公証役場が公証する権限がないということが理由でした。そこで私は、法令を印刷した資料を弁護士事務所に持っていき、弁護士から国の法令であることを認めるサインをもらって、やはりそれにも日本語訳を付けて役場に届けました。そして公証役場は公証をくれました。

― それで受験資格を得ることが出来たのですか?
 
はい。公証を終えて揃った書類を厚労省に提出して最後の個人面談を霞が関で受けました。
「受験資格 認定書」が届くまではハラハラドキドキ、落ち着かない毎日でした。

― 届いた時の気分は?
 
はい。それはもう大変な喜びでした。試験はこれからなのに既に日本の看護師になったような気分でした。
手書きでびっしりと書かれた勉強ノート
― 受験勉強はどのようにしましたか?
 
はい。12月1日から試験日の2月11日まで休職を願い出ました。職場には迷惑をかけましたが、働きながらの勉強ではおそらく足らないと思っていました。過去の問題集を中心に勉強しました。もう一つ、リモートで受験対策を教えてくれる講義を受けました。この先生は関西弁で講義をするので聞き取りには苦労しましたが、論理的に考える、根拠をしっかり覚えるといった、勉強の進め方や考え方を教わりました。
いざ勉強を始めてみるとやはり不安だらけでした。中でも中国とは全く違う社会保障制度を覚えることはとても難解でした。また在学時にはなかった訪問看護や、中国では当時精神科の看護師になる場合は最初から学校が違って、そうでない学校では精神科看護は学びません。そのようにカリキュラムが全く違います。さらにカタカナ表記の単語が難解です。中国では西洋人の名前や地名、医療用語などすべて漢字で書きます。英語ももちろん学びますが、カタカナを読んでも発音が違うので意味が解りません。それでも1日10時間以上勉強にあてました。2か月間はほとんど外に出ていません。

― それは大変でしたね?
 
そうでもありません。私はもともと勉強することは好きです。苦になりません。
 
― 試験はどうでしたか。難しかったですか?
 
そうですね。総合計が300点のうち、午前最初の25問と午後最初の25問、合わせて50問は必修問題となっています。そのうち40問以上正解でなければ、ほかの一般問題でいくら高得点をとっても必修落ちとなります。私はその必修問題がどうなるか心配でした。終わってから自己採点をしてみましたが、やはり必修問題が40点ぎりぎりのようでした。一般問題はおそらく大丈夫だろうと自信がありました。
努力の証!! 看護師登録済証明書を手に記念撮影♪
― 結果は?

必修問題はやはり予想どおりぎりぎりでした。でも今回の試験は必修問題として適切でないとされた問題がたくさんありました。最終的には83%程度の正解率でした。
一般問題は多少の余裕はありましたが、やはりぎりぎりでしたね。

― そうですか。ぎりぎりでも合格に違いはありません。念願かなって看護師資格を取得されておめでとうございます。良かったですね。最後に抱負をお願いします。
 
応援してくださった皆さんにお礼を言いたいです。そしてお世話になっている三光会で今度は看護師として役に立ちたいと思います。
編集後記

今回の第113回看護師国家試験の合格率は87.8%と過去20年間で最も合格率が低い試験だったようです。于宏(ウ・ホン)さんと同じ認定資格で受験した既卒の人の合格率は19.7%でした。1回のチャレンジで狭き門をくぐり抜けて合格された于宏(ウ・ホン)さんに改めて敬意を表します。

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